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映画「うまれる」 豪田トモ監督からのメッセージ
僕は元々、あまり両親と良い関係を築いてきたとは言えません。
でも、「赤ちゃんたちは雲の上で自分の親を選んで産まれてくる」
という話を聞いた時に救われました。
4歳年下の弟が右目が半分つぶれた状態で産まれてきた事から、
小さい頃から親の関心事は弟ばかり。
親の愛情を感じる事が出来ずに育った僕は、
無意識のうちに両親に対してネガティブな感情が芽生えていました。
「自分は愛されているんだろうか?」
「自分は本当にこの親の子なんだろうか?」
30歳を過ぎても、心のどこかで自問し続けていました。
僕がこの企画を考え始めたのは、2007年1月頃でしょうか。
たまたまボランティアで撮影させていただいたセミナーで
産婦人科の池川明先生のご講演を聴いた事が大きなきっかけです。
赤ちゃんと妊婦さん双方にとっての幸せな出産、
という事をテーマに活動されている池川先生のお話は、
「 胎内記憶を持つ子供達が3歳くらいだと何と30%もいる 」
と言うブッ飛んだ内容でした。
そして、さらに池川先生が子供たちへのリサーチの結果を語っていくと、
「赤ちゃんたちは雲の上で自分のお父さんとお母さんを選んでくる」
なんて言うんです。
子供たちは、雲の上から、
「お母さんを癒してあげるため」、
「優しそうだから」と言った理由でお腹の中に飛び込んでくるそうです。
僕は撮影しながら手が震えているのを感じました。
「なんて話だ!」
その場でカメラを倒してしまいそうになるほどの衝撃を受けました。
しかし、
赤ちゃんがお腹の中にいた時の事を覚えている、
胎内記憶に対して
「そんなのありえない」
「覚えてるわけないじゃないか」
「くだらない」
「子供の勘違いだ」
などなど、トンデモ話として一蹴する人もいると思います。
それは、それでかまいません。
でも、僕にとっては胎内記憶が本当なのかどうかはそれほど重要ではありません。
そもそもこの世の中、何がホントで嘘なのか分かりませんし、
何が正義で悪なのかさえ揺らぎつつあります。
そんな不確かな時代においては、
真偽を問いただすのは不毛な事で、
そこにどういうメッセージを見出すか、
の方がより重要になりつつあると思うんです。
僕は池川先生のお話を聞いた瞬間、産んでくれた、
お世話になったと頭では分かっていても、
どこか否定的な考えを持っていた両親に対するネガティブな感情がスーっとなくなっていくのを感じました。
親は自分が選んだ、
つまり、自分に責任がある
と。
親に対するわだかまりがなくなり、
「親孝行が出来る人間になりたい」、と生まれて初めて思いました。
真実かどうかもよく分からないお話に、
心から癒され、勇気づけられたのです。
「うまれる」ことを映画にしたい!
という気持ちが体の中から湧いてきました。
命という原点に向き合うことで、僕自身、両親との関係を築き直せるかもしれない......。
あれから3年あまり。
妊娠・出産のことを知れば知るほど、
そして実際に出産の現場に立ち合わせていただくたびに、
その奥深さとその神秘に僕は圧倒されてきました。
胎内記憶に出会ったことは、「うまれる」ことのほんの一部にすぎなかった。
産まれてくること、そして生きることは、まさに奇跡の連続でした。
いのちってすごい、奇跡的にうまれたあなたは素晴らしいんだ!ということを、ひとりでも多くの人に伝えたい。
こんな、僕のいわば個人的な思いに賛同してくださった多くの方たちに支えられ、
ついに映画『うまれる』は完成いたしました。
世の中には、憎しみ合っている親子、仲違いをしている親子、
僕のようにどこかネガティブな感情を持っている親子、
様々な理由で難しい関係になっている人達がいらっしゃるかもしれません。
また、生きることに疑問を持っていたり、
子供を産み、育てるということに、躊躇をしてしまっていたり、
様々な方がいらっしゃるかもしれません。
そうした人たちに、僕が得たようなポジティブな変化が訪れたら......
そう願いながら、僕はカメラを回し続けてきました。
胎内記憶が本当かどうか、という不毛な議論は一切しません。
それよりも、産まれるという事の意義だったり、
生きるということ、家族の絆、人とのつながり、
自分自身の原点、
人間の神秘性と言ったものに、よりパワーを注ぎ、
多くの人にとっての癒しになる作品になれば、と思って作ってきました。
うまれてきて、よかった。
産んでくれて、ありがとう。
産まれてきてくれて、ありがとう。
全身の細胞全部で、そう感じていただけたらうれしいです。
魂を込めて、作りました。
ぜひご覧ください。